中学高校の授業に役立つ科学ネタ~最新ニュースの話題から授業の小話まで~
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
耐性菌または薬剤耐性菌という言葉をご存知でしょうか?
前回,金属の抗菌剤の話を少し書きましたが,今日は抗菌剤に対抗する強力な細菌の話です。
人類の危機をちょっと感じながら読んでみてください。
前回,金属の抗菌剤の話を少し書きましたが,今日は抗菌剤に対抗する強力な細菌の話です。
人類の危機をちょっと感じながら読んでみてください。
耐性菌または薬剤耐性菌とは,文字通り薬剤(抗生物質)に対して抵抗力を持った細菌のことです。ということは,薬剤が効かなくなったということで,薬ではその細菌に対抗できないということです。
耐性菌は特別な細菌で,世の中には極めてまれだと思っている方も多いと思いますが,実は結構身近に存在していたりします。
☆抗生物質と耐性菌の歴史
そもそも抗生物質発見の歴史は,高校の理科の教科書に出てくるとおり,1929年にフレミングがブドウ球菌の実験中に発生した青カビのまわりに偶然繁殖を抑えている物質を発見し,ペニシリンと名付けたことから始まります。以後,さまざま誘導体が開発され医療現場で大活躍しました。しかし,その後ペニシリン耐性菌が登場してしまいます。
そのペニシリン耐性菌は,メチシリンという抗生物質で抑えることに成功しますが,わずか1年後にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が登場してしまいます。
そこで,MRSAを抑えるバンコマイシンが登場します。当時最強の抗生物質だと思われていたバンコマイシンですが,やがてバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)なるものが登場してしまいます。
このように,抗生物質を作れば,それに対する抵抗力を持った細菌が登場し,そのくり返しが続いています。
☆なぜ耐性菌が登場するのか?
耐性菌の登場は,抗生物質の使いすぎにも原因があります。細菌を抑え込もうと抗生物質を乱用した結果,それに対して強い細菌が登場する・・・進化の過程として全くおかしくはありませんよね?
実際には,抗生物質の使用で,ほとんどの対象細菌は抑え込まれていくのですが,細菌の繁殖速度は恐ろしく速く,その中には突然変異種が多数含まれていても当然です。つまり,その突然変異種の中に,たまた抗生物質に強い種が現れた場合,同環境では生き延び増殖していくことができます。このように突然変異によって耐性菌が登場するパターンが多いのです。
しかし,もう一つの登場パターンがあります。それは細菌が染色体とは別に持っている遺伝子「プラスミド」が別の種に移るパターンです。既に耐性を持った細菌のプラスミドが,別の種と接合することで耐性を持っていない細菌に移ってしまうことがあるのです。そうするとお互いの耐性を持ち合うプラスミドができたりして,非常に多くの抗生物質に強くなった細菌ができてしまうことがあります。
☆でもまた新しい抗生物質を作ればいいのでは?
次々登場する耐性菌に対して人間も次々にそれに対抗する抗生物質を作り続ける。ここまではイタチごっこのように思えますが,人間が次の抗生物質を研究して薬品として製品化する速度を耐性菌の出現速度が上回るようになってしまった場合はどうでしょうか?そうでなくても,人間の研究が手詰まりになってしまう可能性はないとは言えないのではないでしょうか?
抗生物質の乱用によって,抑えるべき細菌がこの世になくなってしまっても,その分世の中が耐性菌だらけになってしまっては・・・。近年,医療の世界でもこれらの問題がクローズアップされてます。
ちょっと関係ないけど・・・
最近,インターネットなどを見ていて理科教員はあることに気づきませんか?サイトによっては普通に「菌が~」とよく書かれていますが,理科教員としては「細菌」と「菌」と「ウィルス」は全く違うというこを口を酸っぱくして生徒に教えているためか,何だか違和感が・・・。細胞壁を持っているかいないか,抗生物質が効くのか効かないのか,そもそも大きさが全然違うこと,どのように生きて増殖するのか,などはしっかり押さえておきましょう(今回はちょっと長くなったのでこには書きません。記憶が怪しい方はどこかで調べてみてくださいね)。
さて,今回耐性菌の話を書いたのは読売新聞社さんの記事を見かけたからです。耐性菌については,今後必ず大きな問題になってくるでしょうね。
(YMIURI ON LINE 科学トップにリンクを貼っているので該当記事をご覧ください)
記事へのリンクについては読売新聞社さんの承諾を得ています。
また,リンク先の記事の著作権は,読売新聞社さんにありますので,無断で転載などなさらぬように気をつけてください。
耐性菌は特別な細菌で,世の中には極めてまれだと思っている方も多いと思いますが,実は結構身近に存在していたりします。
☆抗生物質と耐性菌の歴史
そもそも抗生物質発見の歴史は,高校の理科の教科書に出てくるとおり,1929年にフレミングがブドウ球菌の実験中に発生した青カビのまわりに偶然繁殖を抑えている物質を発見し,ペニシリンと名付けたことから始まります。以後,さまざま誘導体が開発され医療現場で大活躍しました。しかし,その後ペニシリン耐性菌が登場してしまいます。
そのペニシリン耐性菌は,メチシリンという抗生物質で抑えることに成功しますが,わずか1年後にはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が登場してしまいます。
そこで,MRSAを抑えるバンコマイシンが登場します。当時最強の抗生物質だと思われていたバンコマイシンですが,やがてバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)なるものが登場してしまいます。
このように,抗生物質を作れば,それに対する抵抗力を持った細菌が登場し,そのくり返しが続いています。
☆なぜ耐性菌が登場するのか?
耐性菌の登場は,抗生物質の使いすぎにも原因があります。細菌を抑え込もうと抗生物質を乱用した結果,それに対して強い細菌が登場する・・・進化の過程として全くおかしくはありませんよね?
実際には,抗生物質の使用で,ほとんどの対象細菌は抑え込まれていくのですが,細菌の繁殖速度は恐ろしく速く,その中には突然変異種が多数含まれていても当然です。つまり,その突然変異種の中に,たまた抗生物質に強い種が現れた場合,同環境では生き延び増殖していくことができます。このように突然変異によって耐性菌が登場するパターンが多いのです。
しかし,もう一つの登場パターンがあります。それは細菌が染色体とは別に持っている遺伝子「プラスミド」が別の種に移るパターンです。既に耐性を持った細菌のプラスミドが,別の種と接合することで耐性を持っていない細菌に移ってしまうことがあるのです。そうするとお互いの耐性を持ち合うプラスミドができたりして,非常に多くの抗生物質に強くなった細菌ができてしまうことがあります。
☆でもまた新しい抗生物質を作ればいいのでは?
次々登場する耐性菌に対して人間も次々にそれに対抗する抗生物質を作り続ける。ここまではイタチごっこのように思えますが,人間が次の抗生物質を研究して薬品として製品化する速度を耐性菌の出現速度が上回るようになってしまった場合はどうでしょうか?そうでなくても,人間の研究が手詰まりになってしまう可能性はないとは言えないのではないでしょうか?
抗生物質の乱用によって,抑えるべき細菌がこの世になくなってしまっても,その分世の中が耐性菌だらけになってしまっては・・・。近年,医療の世界でもこれらの問題がクローズアップされてます。
ちょっと関係ないけど・・・
最近,インターネットなどを見ていて理科教員はあることに気づきませんか?サイトによっては普通に「菌が~」とよく書かれていますが,理科教員としては「細菌」と「菌」と「ウィルス」は全く違うというこを口を酸っぱくして生徒に教えているためか,何だか違和感が・・・。細胞壁を持っているかいないか,抗生物質が効くのか効かないのか,そもそも大きさが全然違うこと,どのように生きて増殖するのか,などはしっかり押さえておきましょう(今回はちょっと長くなったのでこには書きません。記憶が怪しい方はどこかで調べてみてくださいね)。
さて,今回耐性菌の話を書いたのは読売新聞社さんの記事を見かけたからです。耐性菌については,今後必ず大きな問題になってくるでしょうね。
あらゆる抗菌剤が効かない結核菌,イタリアなどで検出
2007年6月7日 読売新聞社
(YMIURI ON LINE 科学トップにリンクを貼っているので該当記事をご覧ください)
記事へのリンクについては読売新聞社さんの承諾を得ています。
また,リンク先の記事の著作権は,読売新聞社さんにありますので,無断で転載などなさらぬように気をつけてください。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
プロフィール
HN:
理科男(りかお)
性別:
男性
職業:
理科教育アドバイザー
自己紹介:
元中学高校の理科教師。現在は理科教育のアドバイザーをしている。
このブログの更新は不定期です。授業で取り上げられそうなニュースが出たときなどを中心に週2~3回程度の更新になります。
このブログの更新は不定期です。授業で取り上げられそうなニュースが出たときなどを中心に週2~3回程度の更新になります。
最新記事
最新TB
ブログ内検索
最古記事
(05/05)
(05/06)
(05/10)
(05/13)
(05/15)
アクセス解析